書評

久しぶりに書評です。

100年予測|ジョージ・フリードマン (著)

地政学的観点から今後100年に起こることを予測した本。今後100年間、世界の覇権を握るのは米国であり続けるものの、米国への挑戦者は中国、その後は日本・トルコ・ポーランド、さらにはメキシコとなることを理由も含めて解説している。筆者も本書内で述べている通り、この本の価値は、予測が当たるかどうかにはなく、なぜそのような予測になるのかという考え方・ロジックにある。それらの中で面白いと思った考え方は、迫りくる情勢の中で政権がとれる選択肢は意外と少なく、各国がどのような判断をしていくのかはある程度推測可能といった考え方、また情勢は地政学的な要素や科学技術の進展によって大きく変化する、という点だ。

目先の将来を予測する上では、半導体(AIや台湾有事)、無人化技術が労働者不足にどう影響を与えるか、日本が推進する水素ベースのエネルギー政策が世界でどの程度存在感を発揮するのかに注目したい。

半導体戦争|クリス・ミラー

2700円で500頁以上楽しめる、最高の娯楽。数分で読める電子コミックに一話数十円払うことを考えると、この手の本は莫大な価値がある。綿密な調査や分析に基づく、格調高く、それでいて読みやすい文字に触れられて、教養にもなる。NvidiaやTSMCのチャートを見て考察の真似事をしたり、台湾海峡に関するニュースにより関心を持てる。

本書は半導体(≒CPU、メモリ、フラッシュメモリ、センサー、GPUなどの総称)の歴史について述べた本だ。シリコンバレーの勃興に始まり、日米の苛烈な競争、台湾・韓国の台頭、そして半導体製造の難易度が如何にして世界経済のボトルネックを形成し、台湾を唯一無二の存在たらしめたかを解説する。半導体という言葉がフワッとしていて今まで曖昧な理解をしていたが、その後の独自研究(CPUの内部構造の理解)も含め、イメージを描けるようになった。冒頭にも書いたが、文章の密度が凄まじく、それでいて読みやすいので、とて楽しい読書時間を過ごせた。

懐古的な記述が多かったので著者は年配の方だと思っていたが、著者の若さに衝撃を受けた。

大インフレ時代!日本株が強い|エミン・ユルマズ

著者は私の大学の数年先輩で、就職時の環境も近く、勝手に親近感を抱いている。独自の分析で定評があり、Youtubeの動画もたまに拝見するのだが、今回の本は中身が薄いように感じた。語尾の言い回しも同じような表現の使いまわしが多く、やや鼻につく。凄いペースで書籍を出版されているので、お疲れではないかと心配になる。前著の「エブリシング・バブルの崩壊」は良著なのでおすすめできる。

本書は世界の情勢に関する筆者の感想をまとめたエッセイ集のような構成だ。終盤にて、タイトルの主題である日本株の強さの秘密に迫っていく。切り口はユニークだが、個別の銘柄も記載しており、本としての賞味期限は短いような気がする。